福祉用具の選び方

福祉用具の「選択制」貸与・購入のそれぞれのメリットとデメリットについて考える

福祉用具の「選択制」~貸与・購入それぞれのメリットとデメリットについて

令和6年4月より一部福祉用具(固定用スロープ、歩行器、多点杖、歩行補助杖)の選択制開始されましたが、まだまだわからない事が多いよ!とお悩みのケアマネージャーがご家族の方等に向けて、今回の「選択制」の導入で実際にどのようなメリットとデメリットがあるのかをお伝えしたいと思います。

福祉用具の「選択制」~貸与・購入それぞれのメリットとデメリットについて解説

①福祉用具選択制の導入で今までレンタルしていた福祉用具は一体どうなるのか?

結論今まで通りレンタルできます!
但し、定期的にレンタルの継続か購入への移行かの見直しが必要になります。

今回始まった福祉用具の「選択制」は上記にもある通り

・固定用スロープ
・歩行器(脚部がすべて杖先ゴムなどの形状になる固定式または交互式歩行器。車輪やキャスターが付いている歩行車は除く)
・歩行補助杖(ロフストランドクラッチ、カナディアンクラッチ、プラットホームクラッチ)※松葉杖を除く
・多点杖(3点杖や4点杖など、支持面を多点で支える杖)
※今回はわかりやすくする為に歩行補助杖と多点杖をわけております。

上記の4種類の福祉用具が今回の「選択制」の対象になります。

福祉用具のレンタルと今回導入された購入(特定福祉用具販売)の違いについては、購入(特定福祉用具販売)はお住いの自治体市役所へ購入にあたって申請が必要になります。
特定福祉用具販売については厚労省のサイトに記載がありますのでご確認いただければと思います。
参考:厚生労働省:どんなサービスがあるの? – 特定福祉用具販売

②選択制で起こりうる問題や課題

そもそも厚労省の参考資料にも【利用者の身体状況や要介護度の変化、福祉用具の機能の向上に応じて、適時・適切な福祉用具を利用者に提供できるよう、貸与を原則としている。】と記載されているのに今回の【選択制】における購入(特定福祉用具販売)は日々身体状況が変化する高齢者像に合っていないような気がします。「福祉用具貸与にかかる費用を削減したい」が先にきて後から理由付けを行った感がすごい感じられる改定だと思います。
参考:厚労省 介護保険における福祉用具

介護現場では「多点杖を使っていた方が数カ月後には歩行器を使うようになり、一年もしたら車いすが必要になった」なんて変化の仕方はよく見る光景ですし、福祉用具もメーカーが日夜研究を重ねて高齢者の方にとって使いやすい福祉用具を開発されています。

一年前に購入した杖が不要になって車いすのレンタルが必要になったなんて事があれば今回の改正で目指した結果とは違うような気もします。

今後どのような形で購入(特定福祉用具販売)の範囲が広がっていくのかは不明ですが、経費削減ありきで物事を進めてしまうと、本質を見失ってしまい、福祉用具貸与が担っている【利用者の身体状況や要介護度の変化、福祉用具の機能の向上に応じて、適時・適切な福祉用具を利用者に提供する】という価値がなくなってしまうような気がします。

また、施設ではないことですが、在宅介護の現場ではヘルパーも介入せず、デイサービスにも行かず福祉用具の貸与のみで在宅生活を送っている高齢者の方もいるのです。

僕が福祉用具専門相談員として働いていた時も、1人暮らしで転倒予防の為に歩行器のレンタルのみを介護保険で使ってお家で生活をされている方がいました。銀行引き落としにはせずにあえて集金対応にし、ケアマネージャーのモニタリング訪問と福祉用具専門相談員の集金の訪問でその方の安否確認や困りごとを確認していました。

一番の問題は福祉用具購入の対象範囲が広がるとこういった方々のケアマネージャーや介護保険事業者との関りの機会もなくなってしまい高齢者が孤立してしまう可能性も考えられます。

③貸与と購入それぞれのメリットとデメリット

・福祉用具貸与のメリット
身体状況に合わせた福祉用具をレンタルすることができる。
故障や不具合の場合も修理や交換の対応をしてもらえる。

・福祉用具貸与のデメリット
毎月1割~3割の負担金があるので、1割負担の場合杖で100円~300円、歩行器で200円~400円の自己負担が毎月発生する。

・福祉用具購入のメリット
月々の費用負担がなくなる

・福祉用具購入のデメリット
杖や歩行器の杖ゴム部分の交換等、メンテナンスは自分でするか、もしくは別途自費等で業者に対応して貰う必要がある。(業者との個別契約)
月々の費用負担がなくなる以外に目立ったメリットがない
身体状況が変わり不要になった際に処分費用がかかる。

上記のメリット・デメリットから見てもわかるように、入により得られるメリットは月々の費用負担が発生しない位しかありません。

僕が福祉用具専門相談員でご利用者様に提案するのであれば、「固定用スロープ」は段差がある日突然必要になる事はないと思うので毎月の費用が掛からない購入でも特にデメリットは無いと説明し、故障の可能性や部品交換が必要になる「杖」、「歩行器」はレンタルを提案します。

 

④まとめ

今回のまとめ

①福祉用具選択制の導入で今までレンタルしていた福祉用具は一体どうなるのか?

今までレンタルしていたもの引き続きレンタルできます!
但し、定期的にレンタル継続か、購入に移行するかの見直しが必要。

②選択制で起こりうる問題や課題

福祉用具貸与の根幹である【身体状況や要介護度の変化、福祉用具の機能の向上に応じて、適時・適切な福祉用具を利用者に提供する】という価値に反している。

福祉用具購入によって介護保険事業者とのつながりが福祉用具のレンタルのみであった高齢者の方の孤立が進んでしまう可能性がある。
身体状況が変化し、不要になった福祉用具の処分等費用がかかる場合がある

③貸与と購入それぞれのメリットとデメリット

・福祉用具貸与のメリット
身体状況に合わせた福祉用具をレンタルすることができる。
故障や不具合の場合も修理や交換の対応をしてもらえる。

・福祉用具貸与のデメリット
毎月1割~3割の負担金があるので、1割負担の場合杖で100円~300円、歩行器で200円~400円の自己負担が毎月発生する。

・福祉用具購入のメリット
月々の費用負担がなくなる

・福祉用具購入のデメリット
杖や歩行器の杖ゴム部分の交換等、メンテナンスは自分でするか、もしくは別途自費等で業者に対応して貰う必要がある。(業者との個別契約)
月々の費用負担がなくなる以外に目立ったメリットがない
身体状況が変わり不要になった際に処分費用がかかる。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
介護に悩む方がこの記事から何かしらのヒントや情報を得てくださり、少しでもお役に立てたなら幸いです。

 

 

 

 

 

ABOUT ME
ひなパパ
自己紹介 :大阪府内の住宅型有料老人ホームにて勤務中。 令和6年現在36歳で2児のパパです。 福祉用具専門相談員→介護士→介護福祉士→New施設長 前職は福祉用具貸与事業所にて勤務し、ご縁があった老人ホームよりお声がけ頂き介護士に転職、現場経験を経て現在は施設長に。 介護に関わる方のお悩みを解決すべく情報発信をしていきます♪